自分の実子ではない赤ちゃんや子どもを家庭に迎え入れるケースがあります。たとえば、自分たち夫婦に子どもができない場合や、独身者でも子どもがほしい場合などです。

このような場合、特別養子縁組を利用する場合や里親制度を利用する場合があります。

特別養子縁組を利用する場合と里親制度を利用する場合とでは、どのような差が発生してくるのでしょうか?

それぞれの制度の違いを正しく知っておかないと、どちらが自分の場合に向いているのかを判断することができません。

そこで、今回は、特別養子縁組と里親制度の違いについて、解説します。

 

1.目的の違い

血のつながっていない子どもや赤ちゃんを家庭に迎え入れる場合に利用する制度にはいくつか種類がありますが、その中に特別養子縁組と里親制度があります。特別養子縁組と里親制度は、どのような違いがあるのでしょうか?

この点、この2つの制度には、根本的な違いとして、目的の違いがあります

特別養子縁組では、実の親が子どもを虐待しているなどの事情で、実親が子どもを育てられない場合などに、子どもに新しい家庭を与えることが目的とされています。

特別養子縁組をする場合には、子どもは養親と一生続く親子関係を作って生きていくことが予定されているのです。

これに対して、里親制度は、実親が子どもを育てられない場合などに、一時的に養親が子どもを預かって育てるための制度です。

里親制度を利用する場合には、将来子どもは元の家庭に戻ることが予定されているのです

こ のように、特別養子縁組では、養親と子どもとの関係が本当の親子のような取り扱いになり、基本的に永遠に続くことが予定されているのに対し、里親制度では 養親と子どもとの関係は一時的なものであり、子どもと里親が「親子」になるためのものではないことを、まずは理解しておく必要があります。

 

2.親子関係が続く期間の違い

特別養子縁組と里親制度とでは、養親(里親)と子どもとの親子関係が続く期間も異なります。

特別養子縁組の場合には、養親と子どもは実の親子と同じような関係を作ることになるので、親子関係に期限はありません。どちらかが亡くなるまで(あるいは亡くなった後も)親子関係が継続します。

これに対し、里親制度の場合には、里親は子どもを一時的に預かるだけです。

里親が子どもを預かる期間(子どもの養育期間)は、基本的に子どもが18歳になるまでの間です。それ以降は、親が里子を預かって養育する義務はなくなります。ただ、里親制度は、子どもが20歳になるまで延長することができるケースもあります。

また、季節里親などのケースもあります。季節里親とは、夏休みや冬休みなどの長期休暇の間だけ、里子を預かって育てる里親のことです。

このように、里親制度は、特別養子縁組と比べると、子どもの養育期間が非常に限定されています。

 

3.戸籍の違い

特別養子縁組を利用した場合と里親制度を利用した場合には、戸籍の表記も全く異なります。

3-1.養親(里親)と子どもとの関係の記載

特別養子縁組を利用すると、養親と子どもは実の親子と同様の取り扱いを受けます。よって、子どもの戸籍の表記は、養親の「長男」「長女」などと記載されます。この表記を見たときに、養子縁組をしたとわかることはありません完全に本当の親子と同様の記載になるのです

これに対して、里親制度の場合には、戸籍は書き換わりません。よって、子どもの戸籍は元の家庭に残ったままですし、里親の戸籍にも何らの記載もされません。

里親制度は、法律上の「親子関係」を作り出すものではないからです。

3-2.親と子の姓について

特別養子縁組をした場合と里親制度を利用した場合とでは、親子の姓の取り扱いも異なります。特別養子縁組をした場合には、子どもは養親の実の子どもと同様に取り扱われて、養親の戸籍に入ることになります。よって、この場合、子どもの姓は養親と同じ姓になります。

これに対して、里親制度を利用した場合、里親と里子は親子関係にはならないので、姓が変わることはありません。子どもは元の家庭の姓のままとなり、里親の姓とは異なることになります。

 

4.親権者について

特別養子縁組と里親制度とでは、子どもの親権者の取り扱いも異なります。特別養子縁組の場合には、子どもと実親との関係が切れて、子どもと養親との新しい関係が作られます。よって、子どもの親権者も養親に移ります。

これに対して、里親制度の場合には、法律上、子どもは元の親の子どものままです。よって、元の親が子どもの親権者のまま変わることがなく、里親には親権は認められません。

養親(里親)の条件の違い

特別養子縁組と里親制度とでは、養親(里親)の条件も異なります。以下で、具体的に見てみましょう。

5-1.年齢制限

特別養子縁組にも里親制度にも、養親(里親)になろうとする場合には年齢制限があります。

特別養子縁組の場合には、養親となる夫婦の一方が25歳以上である必要があります。また、夫婦が双方とも20歳以上である必要もあります。

里親制度の場合には、里親となろうとするものは25歳以上65歳以下である必要があります。

5-2.夫婦であることが必要か

特別養子縁組の場合、養親になるためには、夫婦である必要があります。独身者は、特別養子縁組で養親になることができないのです。

このことは、特別養子縁組が子どもに恒久的な家庭環境を与えるという目的をもっていることに関係があります。

特別養子縁組は、事情があって実親と一緒には暮らせない子どもに新しい家庭を与えることを目的としていますが、その際、子どもに与える家庭はできるだけ安定している必要があります。そのためには、養親は父母がそろっている方が良いという判断があるのです。

これに対し、里親制度では、里親は一時的に子どもを預かるだけなので、特別養子縁組の場合ほどは家庭環境について厳格に判断されません。

一定の要件を満たしていれば、独身者でも里親になることは可能です。このように、夫婦であることが必要かどうかも、特別養子縁組と里親制度が大きく異なる点です。

 

6.子どもの条件の違い

特別養子縁組と里親制度の違いとして、子どもの側の条件も異なります。

特 別養子縁組では、子どもと実親との関係が切れて、養親との新しい関係が作られます。このように、実の親との関係を完全に断ち切ることは、子どもに対しても 影響が大きいです。あまり子どもが大きくなっていると、実親との別れが子どもにダメージを与えてしまうおそれがあります。

そこで、特別養子縁組を利用するためには、子どもが6歳未満である必要があります。ただ、子どもが6歳未満のときから継続して子どもを養育してきた場合には、子どもが8歳未満までの間、特別養子縁組をすることが認められます

これに対して、里親制度には、このような子どもの年齢についての厳しい制限はありません。里親制度自体が、子どもが18歳になると終わってしまうので、子どもが18歳までの間なら利用することができます。

 

7.手続き方法の違い

特別養子縁組と里親制度は、その手続き方法も大きく異なります。特別養子縁組を利用する場合には、家庭裁判所に申立をして、特別養子縁組を許可してもらうための審判をしてもらう必要があります。

この審判手続きでは、特別養子縁組の条件を満たしているかどうかや、養親の家庭に子どもを迎え入れた場合に問題が起こらないかなどを調査されて、最終的に特別養子縁組を許可するかどうかが判断されることになります。

特別養子縁組を許可する審判がおりると、養親と子どもとの間に法律上の親子関係が成立します。

これに対して、里親制度を利用する場合には、児童相談所から委託を受けることによって里親と里子の関係が成立します。

この場合も、児童相談所から、里親の用意出来る養育環境などが調査されて、里親として認めるかどうかなどの判断をされることになりますが、これは裁判所による審判とは別個のものです。あくまで児童相談所から「委託」を受けるだけで、裁判所による調査などはありません。

また、自動相談所から委託を受けて里子預かっても、里子との間で法律上の親子になるなどの効果はありません

 

8.親子関係の解消方法の違い

特別養子縁組と里親制度とでは、親子関係の解消方法も異なります。

里親制度の場合には、親子関係を解消するのは簡単です。解消をしたい場合には、児童相談所と相談をして、養育関係を解除すればそれで終了します。子どもはまた児童相談所に戻ることになります。

別養子縁組をしこれに対して、特たは場合に、原則として親子関係の解消はできません。裁判所で審判をしてもらっていったん法律上の親子関係を発生させてしまった以上、そう簡単に親子関係を断ち切ることはできないのです。

特別養子縁組の解消が認められるのは、養親が子どもを虐待したり養育放棄したりして、親子関係の継続が子どもの利益にならない場合や、子どもの実父母が子どもを育てられる状態になった場合のみです。

この場合、離縁するためには家庭裁判所で審判をしなければならず、その審判の申立ができるのは、子ども自身か子どもの実親、検察官だけです。

つまり、養親は離縁の請求ができないのです。このように、親子関係解消の方法も、特別養子縁組と里親制度には大きな違いがあります。いったん特別養子縁組をすると、基本的には一生解消はできないものと考えた方が良いでしょう。

 

9.行政からの手当の違い

特別養子縁組と里親制度には、行政からの手当についての違いもあります。

里親制度の場合には、里親は毎月都道府県から手当の受給を受けることができます。その金額は、里親の種類によっても異なりますが、養育里親では月額72,000円~75,000程度、専門里親は123,000円程度となっています。

これにプラスして、食費や衣服などの一般的な生活費として、養育費の支給も受けられます。その金額は、乳児の場合で月額55,000円程度、乳児以外では48,000円程度となっています。

これに対して特別養子縁組の場合には、これらの手当は一切ありません。養親の資力だけで子どもを育てていく必要があります。

このような差が発生するのは、やはり、特別養子縁組と里親制度の制度目的の違いによります。特別養子縁組では、本当の親子関係を作ることを目的にしているので、子どもの養育について行政から手当を支給される理由はありません。

これに対して、里親制度の場合には、あくまで里親は、他人の子どもを預かっているだけという扱いになるので、行政からの手当が支給されるのです。

 

10.どちらの制度を利用するか

このように、法律上の親子関係を作ろうとする特別養子縁組と、一時的に子どもを預かることを目的とする里親制度には根本的な違いがあるので、どちらの制度を利用するかについては、慎重に検討する必要があります。どちらの制度を利用すべきか迷うこともあるでしょう。

里親制度には、養子縁組里親という種類の制度もあります。これは、将来養子縁組を希望する場合の里親制度利用方法です。

特別養子縁組を成立させるためには、6ヶ月以上にわたって子どもを実際に養育監護してきた実績が必要になります

そこで、その実績を作るために、まずは里親となって子どもの養育に携わるのです。問題がなければそのまま特別養子縁組の手続きをすすめて、子どもと養子縁組をすることができます。

このようにステップを踏めば、子どもとの関係もスムーズに作っていくことができます。

もし、里親にするか特別養子縁組にするかで悩んでいる場合には、一度養子縁組を視野に入れて、養子縁組里親の制度を利用してみても良いでしょう。

 

まとめ

今回は、特別養子縁組と里親制度の違いについて解説しました。特別養子縁組を利用すると、子どもとの間で本当の親子と同じような関係が作られます。

当然親としての責任も重いですが、子どもとの関係はとても緊密になります。これに対して、里親制度の場合には、あくまでも一時的に子どもを預かるだけの関係です。責任は軽いですが、子どもとの関係も薄くなります。

子どもや赤ちゃんを自分の家庭に迎え入れる場合、どちらの制度を利用するかについては、慎重に検討する必要があります。まずは、養子縁組里親などの制度を利用してみて、良さそうであればその後特別養子縁組を申し立てる方法もあります。