自分たち夫婦に子どもができない場合など、いろいろな事情があって、血のつながっていない子どもや赤ちゃんを家庭に迎え入れることがあります。

このような場合、特別養子縁組という方法を利用することが多いです。特別養子縁組をした場合、周囲に養子縁組をしたことが知られることはあるのでしょうか?

また、養子となった子どもが将来大きくなった場合に、子どもが養子であることを知ってしまうことなどがあるのかも心配です。

そこで今回は、特別養子縁組をした場合に周囲や子どもなどに知られることがあるのかどうか、解説します。

 

1.特別養子縁組とは

子どもや赤ちゃんを家庭に迎え入れる方法として良く用いられる特別養子縁組ですが、そもそも特別養子縁組とはどのような制度なのでしょうか?

特別養子縁組みは、民法上認められる養子縁組の1種です。民法上認められる養子縁組の方法は2種類あります。それは、普通養子縁組と特別養子縁組です。

特別養子縁組とは、養子縁組のうちでも、養子となる子どもとその実親との法律的な関係が切れてしまうタイプの養子縁組のことです

たとえば、普通養子縁組の場合には、子どもが未成年の場合には、元の実親が親権者のままですが、特別養子縁組の場合には、子どもと実親との関係が切れるので、子どもの親権者は養親に移ります。

では、このような特別養子縁組を利用した場合、そのことを周囲や子ども自身に知られる可能性はあるのでしょうか。以下で確認しましょう。

 

2.特別養子縁組しても周囲に知られない

特別養子縁組をした場合に、学校や近所の人、就職先などの第三者に養子縁組の事実を知られることはあるのでしょうか?

たとえば、子どもが学校に進学する場合や子どもが大きくなって将来就職する場合などに不利益を受けることがあるのかなどが心配になることがあります。

この点、特別養子縁組をしたからといって、そのことが周囲に知られることはありません

特別養子縁組は、子どもと実親との関係が切れてしまうタイプの養子縁組です。よって、特別養子縁組をした場合には、戸籍上も子どもと実親との関係は切れます。

子 どもの戸籍は養親の戸籍に入りますが、その際の記載は、男の子の場合には「長男」、女の子の場合には「長女」となります。戸籍上も、完全に実施と同じ扱い になるということです。この点、普通養子縁組の場合には、戸籍の記載が「養子」「養女」などとなるので、まったく扱いが違うことがわかります。

そして、このように子どもと養親との関係が、本当の親子と同様の記載になるので、戸籍を見ても、その子どもが養子であることはわかりません。

もちろん、住民票などの他の公的な書類においても、特別養子縁組をした親と子は、実の親子と同じ表記になります。

よって、特別養子縁組をした場合には、その事情を知らない第三者に養子縁組をした事実を知られることはありません。

たとえば子どもが学校に進学する際や就職する際に不利益を受けることもありませんし、近所の人や親戚などから「養子ではないか」などと言われることもありません。

 

3.特別養子縁組をしても子どもにも知られない

特別養子縁組を利用した場合、周囲の他人にはそのことを知られることはなくても、子ども自身にその事実を知られることはないのでしょうか?

たとえば、子どもがある程度大きくなったときに、何らかのきっかけで自分が養子であることを知ってしまうおそれがあるのか等が心配になります。

この点、特別養子縁組を利用した場合には、基本的にその当事者である子ども自身も、養子縁組をした事実を知ることはありません。

養子縁組をした場合に、子どもが自分が養子であることを知ってしまうケースの多くは、子どもが戸籍などの書類を目にして「養子」「養女」などと記載されているのを確認してしまうことによります。

しかし、特別養子縁組の場合には、戸籍にも「長男」「長女」などと記載されているので、まるで実の親子と同じ内容の表記になるのです

よって、子どもが将来いろいろな事情で戸籍謄本を確認した場合であっても、子どもが自分が養子であることを知るきっかけにはならないのです。

ただ、特別養子縁組を利用した場合、家庭裁判所で審判が出ます。すると、家庭裁判所から、特別養子縁組を許可する旨の審判書が自宅宛に送られてきます。

審判書は、特別養子縁組の届出をする際に市町村役場に提出しますが、たとえば審判書のコピーをとっておいて、それを自宅に保管していた場合などには、それを将来子どもが大きくなった場合に発見して、自分が養子であることを知るなどの可能性はあります。

また、周囲に特別養子縁組をした事実を知っている親戚などがいる場合、そのような事情を知る人から聞かされて、子どもが特別養子縁組をしたことを知る可能性はあります。

このように、特別養子縁組をしても、基本的に子どもがその事実を知ることはありませんが、何らかのきっかけで知ってしまう可能性はあります。

特別養子縁組をしたことを子どもに知られたくない場合には、なるべく特別養子縁組をしたことを周囲に言わず、関係書類については処分してしまうか、とっておくとしても絶対に子どもの手の届かない場所に保管しておくべきです。

 

4.子どもの実親が会いに来ることもない

特別養子縁組をしても、基本的に子どもや周囲がその事実を知ることはありませんが、子どもの実親は特別養子縁組をしたことを知っている当事者です。

そこで、特別養子縁組をした場合に、子どもの実親が子どもに会いに来るなどして、子どもに特別養子縁組のことが知られてしまうおそれはないのでしょうか?

この点についても、心配する必要はありません。特別養子縁組をした場合には、実親は子どもとは二度と会わないのが普通です

特別養子縁組をする場合というのは、実親に事情があって、子どもを養育できないケースが基本です。

そして、実親は、特別養子縁組をする場合に同意をしています。特別養子縁組をすると、実親と子どもとの関係が切れてしまい、実親にも多大な影響を与えるので、この制度を利用する場合には実親の同意が要求されているのです。

このとき、実親には、特別養子縁組をすると、子どもと実親との関係が切れることが説明され、実親は子どもとは会えないことを了解した上で同意をします。

よって、通常は、特別養子縁組をした場合に実親が子どもに会いに来ることはありません。

実親からの連絡があることによって、子どもに特別養子縁組の事実を知られることはないので、安心して大丈夫です。

 

5.子どもの実親が亡くなっても遺産相続もしない

特別養子縁組をした場合、実親が生きているうちは実親と子どもとのかかわりがないとしても、実親が亡くなった場合には子どもに何らかの連絡が来ることはないのでしょうか?

親が亡くなると、基本的に子どもには親の遺産相続権があります。そこで、特別養子縁組をした場合でも、実親が亡くなると、子どもに対して親の遺産相続に関する連絡などが来るのではないかが心配になることがあります。

しかし、特別養子縁組を利用した場合、実親が亡くなっても子どもには実親の遺産に関する相続権はありません

よって、この場合に子どもの実親が亡くなったとしても、子どもに対して実親の遺産相続についての連絡が来ることはありません。

これは、特別養子縁組では、実親と子どもとの法律的な関係が一切切れてしまうので、子どもは実親の相続権も失うからです

普通養子縁組の場合には、子どもは実親の遺産相続権を失わないので、この点も特別養子縁組と普通養子縁組の大きく異なるところです。

以上のように、特別養子縁組をした場合には、子どもの実親が亡くなったとしても、子どもに何らかの連絡が来ることはなく、子どもに特別養子縁組のことを知られるおそれはありません。

 

まとめ

特別養子縁組を利用すると、子どもと実親との法律的な関係が切れてしまいます。よって、戸籍上の記載も子どもと養親が本当の親子のように「長男」「長女」と記載されます。

特別養子縁組をしても、周囲や子どもにその事実を知られることは、基本的にありません。実親が子どもに会いに来ることもありませんし、実親が亡くなった場合にも特に連絡はありません。

特別養子縁組を利用すると、子どもが将来自分が養子であることを知ってショックを受けたり、社会で不利益を受けることなどを避けられます。

とても有用な制度なので、子どもを家庭に迎える場合には、是非とも一度検討してみてください。