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親を失った子どもへの支援

 

今も昔も、何らかの理由で子どもの育児を放棄、

つまり子どもを捨て子にしなければいけなくなってしまう親がいます。

そんな親に逆らうことができない子どもたちは、

施設へ預けられる子どもたちもいれば、

路上に捨てられてしまう子どもたちもいます。

 

このような事態を防ぐため、様々な努力が国や各団体によってなされています。

そこで、ここでは「親を失った子どもへの支援」と題して、

捨て子とはどういったものか、

捨て子たちになされている努力とはいったいどんなものがあるのか、

等について紹介します。

 

捨て子はなぜ捨てられるのか

 

子どもはなぜ捨てられてしまうのだろうか、その理由は各親によって異なりますが、

親が子どもを捨てるには必ず理由があるはずです。

その理由として、想定外の妊娠や浮気、経済的な理由、DV、ネグレクト、

子どもが憎いなどが挙げられます。

 

これらの理由があって、親は子どもを捨てることに決めますが、

子どもはそのことに対して抵抗することなく、捨てられてしまいます。

それが捨て子というものです。

 

子どもは何も悪くないにもかかわらず、

路上や公共施設などに捨てられ放置されます。

捨てられた子どもたちの中には、誰にも発見されることなく、

最悪の場合死んでしまう子供もいます。

 

また、約1~3歳の子どもにもなると物心が付き始めますので、

「自分は捨てられたのだ」という事実を認識することができてしまうので、

精神的なトラウマなどにより、

PTSDなどの精神的な病になってしまうこともあります。

 

このような事態を防ぎ、

捨て子を救済するための対策が日本では取られています。

そんな対策のうち、ここでは2つの対策を紹介します。

 

赤ちゃんポストとは

 

身元を知られることなく、

病院などで安全に保護をしてもらう為の施設やシステムのことを、

「赤ちゃんポスト」と言います。

 

海外では、1198年、イタリアにも赤ちゃんポストの原型となる施設が存在していました。

一方の日本でも、過去に東京都済生会中央病院の「捨て子台」や群馬県の養護施設、

鐘の鳴る丘少年の家が「天使の宿」など、似たようなシステムを取る施設もありましたが、

現在、このシステムを導入しているのは、

熊本県にある慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」のみとなっています。

 

そもそも、なぜ赤ちゃんポストが設置されたのか。

赤ちゃんポストが設置される以前は、様々な理由で望まない妊娠・出産を経験し、

森などに赤ちゃんを置き去りにしてしまい、赤ちゃんが亡くなってしまっていました。

 

赤ちゃんポストが誕生した理由と現状

 

捨てられてしまった赤ちゃんの無力な死を防ぎ、

一つでも多くの命を助けることが、

赤ちゃんポストが誕生した理由です。

 

現在、捨て子が人身売買されるのを阻止することも、

赤ちゃんポストの役割の一つにもなりつつありますが、

赤ちゃんを「守る」ことに変わりありません。

 

一つの小さく、尊い命を守るために設置された、

赤ちゃんポストは今もその命を救っています。

現在、日本に存在する赤ちゃんポストは、

熊本県熊本市にある慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」だけです。

 

「こうのとりのゆりかご」は、赤ちゃんポスト先進国である、

ドイツのベビークラッペ(Baby Klappe)を模範として、

2007年5月から赤ちゃんの受け入れを始めました。

 

両親のプライバシー保護の観点から、

赤ちゃんを入れる窓口は人目につきにくい場所にあります。

窓口の扉の中には保育器があり、

病院窓口の連絡先などが記入された、両親宛の手紙もあります。

保育器に赤ちゃんを置くと、センサー反応し、

看護師などの医療スタッフが赤ちゃんを保護してくれます。

 

また、「こうのとりのゆりかご」は、などの対策が取られているため、

電話やメールでの相談窓口を設置することで、

安易な気持ちでの利用をすることができないような仕組みを取っています。

 

しかし、そのような対策を取っていても、相談なく赤ちゃんを預ける人もいます。

そのような赤ちゃんは、そこの医者が健康状態を確認し、

その後、熊本市児童相談所と警察へ連絡をします。

 

こうして、赤ちゃんポストに預けられた赤ちゃんは、

児童相談所を通して乳児院へ移されます。

赤ちゃんが成長し、2歳を過ぎても親の引き取りがない、

里親が見つからなければ、

その赤ちゃんは児童養護施設で養育されることになります。

 

次の章では、赤ちゃんの行き先の一つである児童養護施設について説明します。

 

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児童養護施設とは

 

児童養護施設という言葉は最近になってようやく使われるようになりましたが、

それ以前にも孤児院、養護施設という名で、

同じような施設が存在していました。

 

その中でも一番古い“児童養護施設”は、

聖徳太子が西暦593年に作った「悲田院」という施設です。

これは仏教の慈悲の思想に基づいて、

貧しい人や孤児を救うために作られました。

 

これは純粋な孤児院とまでは行きませんが、

行き先を失った子どもたちを救った、重要な施設です。

この悲田院の後も、和気広虫、石井十次ら多数の人物によって

児童養護施設に類するものが作られ、

それにより多くの子どもたちが救われました。

 

児童養護施設が国や地方自治体などによって支援される以前から、

人々の間で支援するための努力がなされていました。

そして、児童養護施設は、児童福祉法41条において、

「児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童など、

環境上養護を要する児童を入所させて、

これを養護し、あわせて退所した者に対する相談

その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設」と定義されています。

 

少し難しく書かれていますが、

要するに児童養護施設は子どものための施設だということです。

何らかの理由で、親から離れなくてはいけなかった子どもたちを救い、

自立した生活を送らせてあげることができるよう、

支援することこそが児童養護施設が存在する目的です。

 

児童養護施設に子どもたちが入る理由と児童養護施設の現状

 

児童養護施設というと、先ほども冒頭で述べたように、

「親は亡くなった子どもが入る施設?」と思ってしまいがちですが、

実は入所する理由の1位は親からの虐待です。

 

児童相談所に報告される児童虐待の数は、

1990年から2010年の20年間でおよそ50倍以上に増えています。

その児童虐待の背景には、母親の育児等に対するストレスが考えられています。

 

夫や父母の助けが十分になかった等の理由が重なることで、

思い通りにいかない子育てに一人で悩んでいるため、

このストレスは生じるのだと考えられています。

 

そのようなストレスによる理由以外にも、

親の病気や経済的理由などによって子どもを預ける親も少なくありません。

これら様々な原因により、子どもたちは児童養護施設入所します。

そんな児童養護施設は、職員の力なしでは運営することは出来ません。

そんな児童養護施設は、全国に約590施設あり、

その児童養護施設には合計約30,000人の子どもたち(2歳から18歳)が生活しています。

 

施設によって、大きさ異なりますが、小規模な所で定員約30名、

大規模な施設では定員が200名を超えるところもあります。

そんな児童養護施設で、

子どもたちと一緒に生活している職員(児童指導員あるいは保育士)は、

親と離れて入所した子どもたちにとっての親代わりとなる、重要な存在です。

 

ところが、2012年度に児童養護施設に置かれる職員数の最低基準が引き上げられ、

小学生以上の子ども5.5人に対して1人の職員が生活の世話をすることになりましたが、

それまでは子ども6人に対して職員1人と定められてきました。

 

「子ども6人に対して職員1人」になったとはいえ、

1人の職員が同時に6人の子どもたちの世話をし、毎日の様子を日記等に記録し、

それぞれの学校の行事に親の代わりとして出席しなければなりません。

これらのことは子どもたち一人一人が将来、一人で生きていくために必要なことですが、

子どもを6人同時に育てるのは非常に大変な労働となることが分かります。

 

非常に厳しい労働環境を強いられる職員の力によって、

子どもたちは自立することができます。

そんな児童養護施設で、

子どもたちはどのような生活を送っているのか、次の章で紹介します。

 

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その他の捨て子への支援

 

赤ちゃんポストや児童養護施設以外にも、

捨て子に対して様々な対策がなされています。

その中の一つに、ハーグ条約というものがあります。

 

グローバル化が進んだ現在、国際結婚は当たり前となりましたが、

それに伴い、捨て子もグローバル化してしまいました。

そんなグローバル社会には欠かせない条約が、このハーグ条約です。

 

この条約では、原則として元住んでいた国へ、

子どもを速やかに返すよう述べられており、

また、国際協力の仕組みや

国境を越えた親子の面会・交流の実現のための協力についても述べられています。

このような条約ができるほど、捨て子は国際的にも考えなければいけない問題の一つです。

 

さいごに

 

今回、この記事では赤ちゃんポストと児童養護施設という

2つの捨て子対策を軸として、

親を失った子どもへの支援について紹介してきました。

 

たしかに、以前よりも捨て子に対する対策はなされてきており、

国や自治体もかなり対策を練り、実行しています。

しかし、これらの対策だけで子どもたち、捨て子たちは幸せになるとは限りません。

例えば、就職活動などでは、まだまだ問題が多い部分もあったりします。

 

 

たしかに「大人になるまでは面倒を見たのだから、

そこからは自立していきなさい。」

という発言はある面では正しいのかもしれません。

 

自立するまでの生活面の面倒を見るという課題は克服できるかもしれませんが、

そういった事実に対して、国や自治体がどうすることができるのか、

という課題は依然として残っています。

 

しかし、これは国や自治体だけの問題ではありません。

国民一人一人が、親を失った子どもたちのことを正しく理解することが必要です。

その目的を果たすために、この記事が役立てば幸いです。

 

※当団体の活動は慈恵病院とは関係ございません